飲酒歴40年、断酒歴3年と8か月、不良初期高齢者、リスボン、60歳。
本日もリスボンの、シネマレビュー・ノープランブログ、ご訪問ありがとうございます。
今日は午前中にふたコマ講義をこなし、
昼休みの教授会をサクッと済ませて、
近所の図書館で開催されたミニ映画会を見てきました。
鴨志田穣のほぼドキュメンタリーともいってよい小説、
「酔いがさめたら、うちに帰ろう」の映画版、
アルコール使用障害を正面から描いた映画作品です。
ネタばれに近い内容になるかもしれませんので、
まだこの作品をご覧になってなく、今後、見てみたいと考えている方は、
これから先はお読みにならない方がいいかもしれません。
とはいっても、もうだいぶ以前に公開された作品ですけどね。
作品全体は、
飲酒者としての人格の崩壊の時期
内科を経て精神科入院の時期
アルコール病棟入院の時期
腎臓がんが明らかになり、人生の最期を家族と過ごす時期
の4つの部分から構成されていました。
当事者ではない人、あるいは当事者の家族ではない人にとっては、
最初のアルコールによって精神と身体がぐちゃぐちゃになっている時期の描写はショッキングかもしれませんが、
もう少ししつこい描写があってもいいように思いました。
ただ、一度、断酒を決心した主人公が、
寿司屋で食べた奈良漬けをきっかけにスリップしてしまった描写は、
当事者にしか分からないであろう、恐怖に満ちたリアリティーがありました。
精神科への入院を扱った章は、
精神障害者の多様性の描写に力点が置かれていたようですが、
少し焦点がぼけてしまったような感じがします。
アルコール病棟への入院の章は、
この作品のエンターテインメントとしての楽しみの中心を果たしていたとともに、
あまり知られることのないアルコール病棟のかなりリアルな表現になっていたのではないかと思います。
医師や看護師と患者たちの人間模様、
さらにはある程度の自治意識をもつ、入院患者同士の人間関係、
なかなか興味深いエピソードが展開しました。
もっとも僕もアルコール病棟への入院経験はありませんので、
あくまできっとこんな感じなんだろうなという感想です。
高田聖子が演じた精神科医が気になりました。
そして主人公の死の直前を描いたと思われる最後の章は、
ある意味で家族こそ、特にこどもこそが精神疾病者の最後の砦であることを表現していましたが、
少しきれいに描きすぎたのではないかという感想をもちました。
観る前は、もっと身につまされ、終了後にしばらく席を立つことができないのではないかと思っていましたが、
やはりアル症者のリアルは、作品にはなりにくいんだろうなと思いました。
浅野忠信と永作博美の二人は、さすがに俳優として優れた技量の持ち主であり、
アル症を扱った作品として構えてみていたのですが、
観終わった時点では、この二人の好演技に感心したというのが正直な感想です。
劇中の内科医が言っていた、
「誰にも同情されることのない病気としてのアルコール依存症」に対する、
一般社会のイメージが少しでも変わることを望みます。
皆さんも僕も、今日も明日も、厚かましくも謙虚にかつご機嫌さんで
LWoA Life Without Alcohol 断酒ライフ、継続していきましょう。