僕のワンノートサンバ

断酒ライフを送る元大学教師にしてジャズ・ピアニスト、ヴォーカリスト

じぃちゃんとボブの話

飲酒歴40年、断酒歴5年と1か月、不良初期高齢者、リスボン、レベル62。

本日もリスボンの、ちょっぴり涙のノープランブログ、ご訪問ありがとうございます。

 

定年後、息子夫婦と二世帯住宅で暮らしているじぃちゃん、

永年連れ添った奥様に先立たれ、

突然、それまで飼ったこともない、ゴールデンレトリーバーの赤ちゃんを買ってきて、

ボブと名付け、一人で世話をすると言い出しました。

 

家族は、まだちっちゃなゴルの赤ちゃんだから飼えるような気がしているだけで、

絶対にじぃちゃんにわんこの世話は無理だと猛反対します。

しかしじぃちゃんは赤ちゃんゴルにボブと名前を付け、

毎日、人が変わったように、世話をするようになりました。

 

ある日、いつものようにじぃちゃんとボブは、近所に散歩に出かけました。

ボブは何の気なしに、道に落ちていた誰かのお菓子の食べかすを食べようとしますが、

じぃちゃんはきつく叱りました。

そして家に戻り、縁側でボブに、なぜ拾い食いをしてはいけないかを、

3時間もこんこんと説明しました。

ボブはおとなしく、ずーっと聞いていました。

 

でも縁側で、ボブがじぃちゃんから一番よく聞かされていたのは、

亡くなったばぁちゃんとの思い出話でした。

優しく語るじぃちゃんの横で、ボブも穏やかな顔をして聞いていました。

 

小っちゃかったボブも、立派なゴルに育ちました。

でもいつものように縁側でじぃちゃんの思い出話を聞くボブの顔は、

赤ちゃんの時と同じ、優しい笑顔でした。

 

そんな日が続いていましたが、突然、じぃちゃんがばぁちゃんのところに行ってしまいました。

本当に突然の旅立ちでした。

 

残された家族は、残されたボブの世話を見始めました。

大きな体のボブを散歩に連れて行こうと孫娘さんがリードを引っ張ると、

ボブは、娘さんの手首を噛みました。

 

何とかボブをなだめつつ、散歩に連れ出していましたが、

ボブはその後も、誰であろうと、無理にリードを引く人の手首を噛むことが続きました。

 

家族は犬のしつけトレーナーに依頼し、ボブの噛み癖の矯正を望みました。

トレーナーさんはボブに対していろいろなケアを試みましたが、

やがて専門家としての経験から、一つのことに気が付きました。

ボブは散歩を嫌がっていたのではなかったのです。

 

ボブは、大好きなじぃちゃんと一緒に過ごした場所、

大好きなじぃちゃんのお話を聞いていた場所、

縁側から無理やり引き離されそうになることに対して、

心の底から抵抗していたのです。

 

トレーナーさんのアドバイスを聞いた家族のみんなは、

縁側で優しい顔で寛ぐボブの時間を、最大限に尊重することにしました。

 

やがてボブもじぃちゃんのところに旅立ちました。

いつもの縁側で眠るような最期でした。

 

今日、ブックオフでたまたま見かけた、マンガエッセイのあらすじです。

立ち読みしながら涙が止まらなくなり、焦りました。

たまたま近くに誰もおらず、マスクも着用していたので、

古本屋で一人涙ぐむ、白髪のオッサンというシュールな光景を目撃されることはなかったと思います。

でも、正直、ヤバかった。

また思い出して泣くと思います。

 

皆さんも僕も、今日も明日も、厚かましくも謙虚にかつご機嫌さんで、

LWoA Life Without Alcohol 断酒ライフ、継続していきましょう。