僕のワンノートサンバ

断酒ライフを送る元大学教師にしてジャズ・ピアニスト、ヴォーカリスト

勝手な解釈をしたのが僕たち

飲酒歴40年、断酒歴6年と3カ月、不良初期高齢者、リスボン、レベル63。

本日もリスボンの、意外に難問?ノープランブログ、ご訪問ありがとうございます。

 

マスメディアにもたびたび登場する、生物学者

池田清彦氏が、著書の中で少し気になる見解を述べているそうです。

「そろそろ酒やタバコは控えたら」そんな医者や友人のアドバイスは適当に無視したほうがいい(プレジデントオンライン) - Yahoo!ニュース

 

池田先生は、毎日、酒を楽しんでいるそうです。

そして休肝日をもつことを勧める友人や医師のアドバイスは、

完全に無視するとのこと。

いわく、

「酒があることで元気に生きていられる、

下手に飲酒を制限すると、ストレスのために逆に体に悪い」

んだそうです。

 

そしてさらに、

健康診断の結果に従って飲酒等の生活習慣を変えてしまうことの愚かさを批判されます。

こちらもいわく、

「健康診断の結果の数値とそれに基づく判断は、

あくまで統計的な平均値からのずれを確認するだけの話で、

このずれの数値は個人差が大きく、平均値から外れているから異常であるとは必ずしも言えない」

んだそうです。

 

どちらの主張も、ごもっともな説とも思います。

特に健康診断の結果に対する機械的な判断の無意味さに対する批判は、

医療からヒューマニズムが失われつつあるかもしれない現状に対する強烈な批判として、

痛快ですらあります。

 

しかし、池田先生の批判的な慧眼は、

場合によっては危険な結果に結びつくこともありそうです。

適切な飲酒量や飲酒法は、当人が最も的確に判断できるという、この主張は、

判断する本人が十分な理性的良心を確保できている限りにおいて有効でしょう。

しかしかつての僕たちにように、

すでにアルコールの危険な薬効によって精神にほころびが生じ始めた輩にとっては、

すでに正常な閾値を超えている自身の飲酒量を正当化するための、

ごまかしの根拠として悪用される可能性が否定できません。

 

「飲んでる本人がご機嫌様なんだから、体に悪いわけがない」

「自分の体のことは自分が一番、分かっている」

そんなふうに根拠もなく嘯きながら、僕たちは過剰飲酒をさらに加速させていました。

もちろん、本音の一番奥深いところでは、

すでに自分が危険な状態にあることは、うすうす感づいていました。

 

かつての僕がそうでした。

どう考えても、アルコール使用障害、一本道まっしぐらな飲み方をしてました。

そして肝臓を壊し、脳みそにも修復不可能な傷を負わせてしまいました。

幸いにも一命はとりとめています。

 

僕たちにできることは、いつも主張していますが、

長期にわたる過剰飲酒のもっている危険性について、

経験者、当事者として語ることでしょう。

僕たちの通った道を、今、まさに走り抜けている人たちにブレーキをかけるのは、難しいでしょう。

しかし、この危険な助走路に足を踏み入れかけているかもしれない人たちには、

僕たちの声は届くかもしれません。

断酒サバイバーには、当事者にしかできない、社会貢献がありそうです。