僕のワンノートサンバ

断酒ライフを送る元大学教師にしてジャズ・ピアニスト、ヴォーカリスト

ゲートウェイ・ドラッグ?

飲酒歴40年、断酒歴6年と7か月、不良初期高齢者、リスボン、レベル63。

本日もリスボンの、断片的考察・ノープランブログ、ご訪問ありがとうございます。

 

30年以上前の話をカミングアウトします。

僕は一度だけ、マリファナを吸引したことがあります。

細かい事情は伏せさせてください。

飲酒中の吸引経験でしたので、

アルコールによってハイになっていたのか、マリファナの効果があったのか、

今となってはわかりませんが、

とにかくやたら愉快な感覚にあふれ、にこにこしていたような記憶があります。

 

マリファナの吸引それ自体は、罪には問われないそうで、

罪に問われるのは所持や栽培だそうです。

マリファナに関しては、世界には合法薬物とされている地域もあるようで、

ジャンルを問わず、アーティストに常用者が多いとも聞きます。

 

マリファナの危険性としてよく言われるのが、

ゲートウェイ・ドラッグとして作用しやすいのではないかという点です。

マリファナ自体にはそれほど強い依存性はないが、

他のより危険性の高い薬物に対する抵抗感を下げてしまうことによって、

深刻な薬物使用障害につながる恐れがあるということでしょう。

 

酒にもゲートウェイ・ドラッグとしての可能性が指摘されることもあるそうです。

確かに飲酒によって気が大きくなることで、

気軽に違法薬物に手を出してしまう、

そしてその薬物とアルコールの相乗効果によって、

より危険な快楽状態がもたらされることもあるようです。

 

もしかすると僕の誤解かもしれませんが、

薬物使用障害が他の薬物への抵抗感を下げているかもしれないという事例を、

今日、身近に見ました。

 

今日は睡眠薬使用障害の親父の、定期受診の日でした。

高齢者向けサービス付き住宅に住んでいる親父のもとに迎えに行くと、

約束の時間になっても現れません。

施設の職員さんに呼び出してもらったところ、出てきましたが、

本人曰く、昨晩から軽度の錯乱状態が続いているとのことです。

これまで何度も、茶番自殺のしりぬぐいをさせられてきた身としては、

くそじじいの報告は話半分に聞き流すことにしていますs。

 

少し気にはなりましたので、今日は診察室にも同席しました。

親父は先生に、昨晩から判断力が失われていることを切々と訴え、

この状態を改善してくれる薬物の処方を要求しました。

ここで少し気になったのが、親父が劇薬を処方してほしいといっていた点です。

 

先生は新たな薬物の要求は無視されて、

現在処方している薬を飲んでいれば回復しますよと優しく諭してくださいました。

親父は再三にわたって新たな薬物の処方を要求しましたが、

もちろん、先生はやんわりと拒否されました。

 

現在、親父は、3種類の薬物を処方されています。

どれも、広い意味での精神安定剤と言える薬物で、

お医者さんから処方していただけば薬品ですが、

そうでなければ危険ドラッグの類に含まれるものでしょう。

 

親父は新たな苦痛や精神不安を経験すると、

新たな、より刺激の強い薬品を求めます。

つまり、現在あやつが医師の処方のもとに服用している薬物が、

ある意味で、ゲートウェイ・ドラッグとしての作用をもち始めているのかもしれません。

親父が先生に、劇薬という言葉を使って処方を要求した点に、

問題が集約されているような気がします。

 

薬物は使いようによって、役に立つこともあれば、

とてつもなく危険な状態を招来することもあるようです。

僕たちはアルコールという薬物の過剰使用によって、

自らの精神に修復不可能な傷をつけました。

しかし薬物の危険性は、それ自体がもたらす直接的な困りごとにとどまらないようです。

僕たちにとってはアルコールをゲートウェイ・ドラッグにならなかっただけでも、

幸運だったのかもしれません。

僕たちは、薬物の危険性を伝える語り部として、そう簡単に死ぬわけにはいかないようです。