僕のワンノートサンバ

断酒ライフを送る大学教師にしてジャズ・ピアニスト、ヴォーカリスト

俺は実は先進的過ぎた?

飲酒歴40年、断酒歴7年、不良初期高齢者、リスボン、レベル64。

本日もリスボンの、鼻持ちならない自慢のノープランブログ、ご訪問ありがとうございます。

 

昨日で勤務先の大学での今年度の授業を全部終えました。

採点業務がまだ残っていますが、とりあえず、一区切りをつけた感じです。

今日は、2件の会議と2件の打ち合わせのために出勤してまいりました。

 

一つ目の会議での話題から紹介します。

僕も今日、初めて聞いたのですが、

新年度の4月に1名、

進行性の筋ジストロフィーとともに暮らしている新入生が入学してくるそうです。

 

ここ20年ほどで、日本中の大学で、

障害とともに暮らしている若者を学生として受け入れることが当たり前になり、

障害ゆえに入学を辞退してもらうなどという、

人権無視も甚だしい、前時代的なことはほとんどなくなりました。

でも、かつてはあったんですよ。

 

僕の勤務先でも障害とともに暮らしている入学志願者に対して、

入試判定の段階で、入学をお断りする事態が、

正直に言えば、ありました。

大学側の理屈としては、

人的にも設備上の問題としても、

そして何よりもカリキュラム上の問題で、

責任をもって就学を保証することはできないという理屈でした。

 

しかし今では、人権上の問題としても、

そんな理屈は通用しませんし、

社会通念上も大学がとるべき態度ではないというのが、

常識になっているといえます。

 

しかし今回のケースは、どうやらかなり難しいそうです。

現状では、車いすで生活を送っているということだそうですが、

何分にも進行性の疾病ということもあり、

大学としてどこまで学修をサポートできるのか、

手探りの状態になりそうです。

 

僕の勤務先の大学では過去に1名、車いすを利用する学生を1名、受け入れています。

僕はその学生さんについて、オープンキャンパスのころからよく知っており、

入学後も緊密にコミュニケーションをとり、

卒業後、1年間だけ、僕の研究室に所属する研究生として受け入れたこともあります。

 

彼女は、実は非常な苦労を伴いますが、

2本の杖を用いて自力で歩行することができました。

ですので、彼女の入学に際して、

授業が行われる2階の教室への移動について、大学として個別のサポートは行わないことになりました。

僕はその決定の際に、人海戦術体制での職員によるサポートを実践すべきではないかと提案しました。

つまり、車いすごと、複数の職員で運び上げてはどうかと提案したのです。

 

その時の僕の提案は、一顧だにされませんでした。

ほぼ、一笑に付されたといってもいいでしょう。

 

そのような業務を前提とした勤務制度になっていない、

時間調整等の負担増の予想がつかない、

そもそも本人の意志での入学なのであり、本人が解決すべき問題である、

等々、様ざまな理由を並べ立てられ、僕の提案は拒否されました。

 

僕も実施を前提とした現実的な提案を行ったわけではありませんでした。

しかし、サポートできる可能性があるのであれば、

サポートを試してみてもいいのではないか、位の気もちでした。

憤りを感じつつも、その時はそれ以上強い主張はできませんでした。

 

今回の筋ジストロフィーとともに暮らす新入生に際するサポート体制については、

まだ具体的な検討には入っていないそうです。

ただ大学事務局としても、

相当な覚悟で、それこそ人海戦術によるサポートも視野に入れているようです。

 

今日の会議の際に発言はしませんでしたが、

様ざまな細かい事情の違いはあるにしても、

十数年前の僕の主張に、ようやく大学がついてきたのかという感じです。

 

来年度で定年を迎える身としては、

あまり無責任な提案は控えるべきだろうとは思っています。

でも、かつての僕の青臭い提案は、

青臭かったのは事実ですが、社会が向かうべき方向に沿っていたという自信はありました。

 

多少なりとも経験値を積み上げてきましたので、

もう少し高所から要所を眺める視点も身につけたとは思いますが、

青臭くても夢見る夢ジィではあり続けようと思います。

めでたき二度目の人生ですので。