僕のワンノートサンバ

断酒ライフを送る元大学教師にしてジャズ・ピアニスト、ヴォーカリスト

鮒ずし

57歳にして、肝硬変とアルコール依存症、ダブルパンチと楽しく格闘しています、リスボンです。

昨日は、僕の勤務している大学の第1期の卒業生、木内貴志氏の里帰り個展の関連イベント、アーティスト・トークと記念パーティーが開催されましたので、午後から大学に行きました。

アーティスト・トークのゲストには、本学を4年前に定年退職された、世界的な具体美術の生き証人アーティスト、今井祝雄先生がお越し下さり、僕も今井先生にはいろいろお世話になったこともあり、駆け付けた次第です。

トークは、本学が開学して間もないころの木内氏や当時の学生諸氏の活動が紹介され、当時を同時体験している数少ない証人としての僕も、興味深く、また懐かしく聴きました。

アーティスト・トークの後は、会場を戸外に移しまして、本学の立体、彫刻、構想表現、そして現代アートクラスによって伝統的に引き継がれてきたオリジナルの鉄板焼き機による焼き鳥と、参加者各自が持ち寄った飲み物や食事によって、パーティー(というより、殆どBBQ)が開かれました。

大学の関係者は僕が断酒ライフに入っていることをご存じいただいているので問題ないのですが、久しぶりに大学に来てくれた卒業生や外部からのお客さんたちには、僕が断酒ライフを送っていることを説明する必要がありました。
ま、確かに、酒があるのに飲まないリスボンを見るのは、彼らにとっては驚き以外の何物でもなかったと思います。

ところで、持ち寄られた食事の中に、滋賀県名産、鮒ずしがありました。

鮒ずし、滋賀県民にとっても、主にその価格の面から、日常的に食卓に上がるものではなく、まさに珍しい味覚、珍味です。
鮒をご飯とともにつけることによって発酵させた食品、それが鮒ずしです。
ブルーチーズのような独特の匂いがあります。
人によっては、この匂いゆえに受け付けないという人もあるでしょう。

僕は大好きです。
ただし、これまでの僕にとって、鮒ずしは、当然のごとく飲酒を伴う料理でした。
あの独特の強烈な味わいは、辛口の純米酒の冷と合わせると、抜群のコンビネーションを形成します。

さて、LWOA Life Without Alcohol を実践している身としましては、ちょっとした試練の場です。
目の前には、鮒ずしがあり、誰かが差し入れてくれている、美味しそうな純米酒もあります。

ちょっと怖かったのですが、まずは鮒ずし、食べてみました。
やはり、抜群に美味しかった。
ブルーチーズのような少しばかりのねっとり感と、刺激的すぎない酸味、そして少し強めの塩味。

ここで僕が確信したのは、これはこれで、美味しさとして完結しているということでした。
確かに、ここにお酒を合わせれば、それはそれで抜群の楽しみになります。
でも、この味わいをその味わいとして口中に残しておくのも、また別の楽しみであることが分かりました。
つまり、酒と合わせなくとも、鮒ずしは鮒ずしとしてムチャムチャ美味しいのです、当たり前ですが。

昨日はありませんでしたが、鮒ずしと温いご飯、絶対にうまいです。
それから、鮒ずしと薄くバターを塗ったバケット、これも絶対いけると思います。
手はかかりますが、それから試したこともありませんが、鮒ずしのスパゲッティなんてのも、多分、ありやと思います。

美味しい食べ物は、お酒と一緒に楽しむのも美味しい。
でも、飲酒を伴わない楽しみ方もあります。
むしろ、お酒によって味覚が変化することを考えると、飲酒を伴わない楽しみ方の方が、味覚としては純粋かもしれません。

スィーツ以外の、いわゆる酒の肴とされる食べ物の美味しさ、僕たち断酒生活者にとっても、その楽しさは開かれていることが確認でき、この冒険の成功をうれしく感じました。

今日も、皆さんも、そして僕も、ご機嫌さんで、LWOA Life Without Alcohol 断酒ライフの継続を。