僕のワンノートサンバ

断酒ライフを送る元大学教師にしてジャズ・ピアニスト、ヴォーカリスト

井の中の蛙を知る

飲酒歴40年、断酒歴2年と少し、読書歴四十数年? リスボン、59歳。

本日もリスボンの、今さらの楽しみ・ノープラン・ブログ、ご訪問ありがとうございます。


飲酒者の頃も本は読んでいましたが、
あの頃の僕は、ある意味で偏った読書家だったような気がします。

まず仕事関係の本を第一に、
それも洋書・原書が何よりも重要でした。

それからよく読んでいたのが新書系のノンフィクションです。

つまり小説というカテゴリーは、かつての僕の目には留まりませんでした。


しかし断酒ライフに入門してから、意識的に小説を読むようになり、
また小説を読むことの楽しさも知るようになりました。

最初は、ナイトキャップ、つまり、眠気を誘うための工夫としての読書だったのですが、
今でもそれは変わらないのですが、
もっと積極的に小説を読むことを楽しむようになりました。


僕は仕事でも文章を書くことが多いので、
小説を読みなれていくにつれて、
作家ごとの書き方の違いあたりにも興味をもつようになります。

で、以前にも書きましたが、
やはり我々、アル症者を描かせれば、やはり同じく当事者でもあった中島らもの筆の冴えには舌を巻きました。

もちろんらもは、根っからの才人だと思いますよ、
でも、やっぱりもちは餅屋ですね(少し意味が違うかも)。


で、今、村上春樹の代表作になるであろう長編を、
今さらですが、読んでいます。

構成や登場人物の描き方に難癖をつけようと思えば、なんぼでも文句の言いようはありそうですが、

しかし、主人公の一人がそれまでの半生を振り返るモノローグには、ちょっとやられたかなと思っています。

(ネタばれになりますからあまり詳細は触れませんが、正確にはモノローグではありません。)


曰く、数学の神童であり、また柔道の達人であった彼は、
大学進学とともに自らの限界を知り、
井の中の蛙であったことを認めることになります。

簡単にまとめてしまうと、誰でも経験しそうな平凡なことかもしれませんが、
しかし僕は、このモノローグに僕自身を重ねてしまいました。

また彼は常に女性との縁が切れることがなかったのですが、
しかし自らを全て捧げてしまうほどの愛を感じることはなかったことにも気が付きます。

このくだりにも僕はグサッときました。


先ほど、アル症者を語らせたら中島らもの右に出るものはないと思われることを書きましたが、

同じ連想でいけば、村上春樹も生意気盛りの20代から30代にかけて、
己の限界を思い知らされたのかもしれません。

やはり小説という表現は、
自らを残酷なまでに分解し振り返らないと書けないものなのかもしれません。

僕にはまだまだできそうにありません。
僕自身がある意味で前科者であるという昨日の話題も含めて、僕は僕自身の過去を直視することができません。

自分自身を徹底的に見つめなおす、そして白日の下にさらす、
ある種の表現は、そのような痛みの上に成り立つのかもしれません。

まだまだ知りたいこと、味わいたい世界がいっぱいありそうです。


僕は死にまっしぇん!

そのためにいつものように

皆さんも僕も、今日も明日も、厚かましくも謙虚にかつご機嫌さんで
LWoA Life Without Alcohol 断酒ライフ、継続していきましょう。