僕のワンノートサンバ

断酒ライフを送る元大学教師にしてジャズ・ピアニスト、ヴォーカリスト

勘違い力

飲酒歴40年、断酒歴2年と8か月、不良初期高齢者、リスボン、59歳。

本日もリスボンの、わがまま哲学?ノープランブログ、ご訪問ありがとうございます。



一時、老人力という言葉がはやりましたよね。

歳を取ってくると、細かいことをどうしても忘れがちになる、

そのような状態をあえてポジティブにとらえ、

物事の細かいことにはとらわれない、
大局観でものごとを判断できる能力として名付けてみた時に、
老人力という、
スーパーはた迷惑、でも当事者にとってはむちゃムチャ前向きな概念が生まれたのだと思います。


もちろん僕も、
着実に老人力が向上しています。

若いころは、
スケジュール帖はあえて確認するためにつけるのではなく、

一度文字に書き起こすことによって確実な記憶データとして脳に定着させるための道具でした。

あの頃は一度書いたデータは、いつでも何の助けもなしに呼び出すことができました。


でも今の僕にとってスケジュール帖は、
ホンマにスケジュールを確認するために何度も開け閉めするメディアとして、
なくてはならないものになっています。

毎週、週明けには、
今週は何があったっけと、確実に確認する必要があります。

老人力全開です。


ところで飲酒の効能としてよく言われることであり、
そして飲酒者であった僕たちも時に感じていたかもしれない点に、

ともに酒を酌み交わすことによってコミュニケーションが深まるということが挙げられます。

特に、
これから一緒に仕事をすることが増えてきそうな新しい知り合いとは、

適当な段階で酒席を共にすることで、
一挙に親密になるような気がします。


もちろん、親密になれるという効能は、
間違いなく、飲酒行動の利点の一つでしょう。

しかしその、互いに親密になれるという効能は、
お互いのことをより深く知り合ったという感覚に基づいていると思うのですが、

その互いによく分かりあえたという感覚そのものは、
勘違いである場合が少なくないようにも思います。

酒を飲んでいる時は間違いなく判断力が低下しています。

低下した判断力の下では、
互いに交換した情報がそれほどマッチングしていないにもかかわらず、
ほんの少しの、少しばかり目立ったマッチング要素の存在を過大評価してしまい、
あたかもすべてを分かり合えたかのような気になっていることが少なくないのではないでしょうか。


つまり飲酒は、僕たちの勘違い力を高めてくれるのです。

勘違い力が高まった状態では、
互いに交換する情報の相互デフォルメ現象が起こり、
酔っ払い同志は、
不思議なレンズと一時的なエフェクターを通して互いを知るようになり、

さらなる勘違い力の高まりを生み出したます。


こう考えてみると、
飲酒による親密度の深化という現象は、

互いの勘違い力の効能がさらに相互に高めあった結果であり、
場合によっては、
誤解が放置されることによる不幸な結果を導き出すこともあるでしょう。

そしてめんどくさいことに、
勘違い力の高まった状態での誤解の親密さの深まりは、

当事者にとって、少なくともその時は、
むちゃムチャ愉快な感情体験になります。

あの愉快さは、確かに楽しかった。

でも断酒生活に入門した以上は、
もっと確かな情報交換や感覚、感情の共感に基づいた、
より確実な親密さを求めるべきでしょう。


老人力の高まりはどうやら避けがたい必然のようですが、
勘違い力ののさばりは抑えることができそうです。


断酒ライフ実践者という特権階級である僕たちは、
不要な勘違い力を排除する能力を確実に身に着けているはずです。

つまり僕たちは、すごい連中なんですよ。


もっともこの結論そのものが勘違いかもしれませんが、
でもブレーキの壊れた共感よりも、
時に立ち止まることのできる感性の方が豊かな人生をもたらしてくれそうです。

僕たちはシャープに幸せを求めなければなりません。

ですのでいつものように

皆さんも僕も、今日も明日も、厚かましくも謙虚にかつご機嫌さんで
LWoA Life Without Alcohol 断酒ライフ、継続していきましょう。