僕のワンノートサンバ

断酒ライフを送る元大学教師にしてジャズ・ピアニスト、ヴォーカリスト

エンターテインメントとアヴァン・ギャルド

昨日も投稿しましたが、私、リスボン(男、57歳、大学教員)の断酒ライフ、120日を超えました。

57歳にして大きな人生の変化を体験中です。

飲酒ライフから断酒ライフ、ホンマにいろいろな変化がありました。
体調の変化(血圧が下がった、疲れやすくなった、睡眠時間が短くなった)、
味覚の変化(今、目の前に刺身とスィーツがあったら、スィーツを選択します)、等々。

生活面での変化の一つに、以前とは読書傾向が変わったという事もあります。

以前の僕は、殆ど、小説を読むことはありませんでした。

というよりも、読書という行為を常に仕事(研究および教育)との関係の中で考え、研究に直接的に資すると判断される読書以外は、排除していた傾向がありました。
「研究に関係ない本は読まない」、やな奴ですね~。

いやな奴だったんです、リスボン君は。

でも断酒ライフに入ってから、時間の使い方が変わったこともあり、睡眠前の読書の1日の中で占めるウェイトが高くなりました。

そして、今まではあまり読んでこなかった、日本人の作家による、娯楽作品を楽しむようになりました。

やっぱり、一定の評価を受け、マーケットでポジションが確立されている作家の作品は、違いますね。
読んでいて素直に面白いし、読み終わった後に、上手いこと読者を惹きつけるよなぁと、その文章や構成に示される職人力にも感心させられます。

かなりべたですが、真保裕一あたりは、長編も短編も、念入りな取材に裏付けられたその語り口には、いつもやられてしまいますし、こちらも同じくべたでムッチャ昭和感が高いのですが、西村京太郎の十津川刑事シリーズも、よくできていますよね。

社会福祉と芸術学の研究に従事してきた身としましては、これまで最もとんがった美意識や感性の表出としての前衛的な表現に常に関心を払ってきました。
様ざまな分野のアヴァン・ギャルドな表現に関わることは、大げさな言い方をすれば、僕の人生の最大の関心事の一つでした。

今、ある程度の年齢を重ね、アル症と肝硬変で断酒ライフを送ることになった身としましては、
アヴァン・ギャルドへの関心を維持しつつ、エンターテインメントにも関心を払うことがプラスになることに気がつきました。

考えてみれば、21世紀に入ってから、美術、音楽、そして文芸のあらゆる表現分野において、アヴァン・ギャルドとエンターテインメントは、ある意味でアヴァン・ギャルド側の戦略の一環として、積極的な接近を見せているともいえそうです。

勝手な思い込みかもしれませんが、時代の大きな変化と僕自身の個人的な変化のラッキーなシンクロニシティ―に身を任せながら、また図書館の文庫本コーナーをうろうろしようと思います。