僕のワンノートサンバ

断酒ライフを送る元大学教師にしてジャズ・ピアニスト、ヴォーカリスト

当事者コミュニティーの必要性

飲酒歴40年、断酒歴2年と少し、ピアニスト歴38年、厚かま高齢者、リスボン、59歳。

本日もリスボンの、論文みたいなタイトルですが実は・ノープラン・ブログ、ご訪問ありがとうございます。


ホンマに論文みたいなタイトルでスンマセン。

でも将来的にはこのタイトルのような論文を書きたいと思っています、
つまり今日は、少しまじめな話(かな)。


僕の勤めている美大の卒業制作展、そのパート2が今日から始まりました。

僕は特定のクラスを指導しているわけではないので、
直接的な指導教員ともまた違った、
そして一般の鑑賞者ともまた違ったマインドセットで展示を楽しむ?ことができます。

美大にとって卒業制作展というのは、
それこそ大学のありとあらゆる行事の中でも最も重要な位置づけがされるイベントです。

学生一人一人にとってみれば、
決して安くはない授業料と、
決して楽ではなかった勉強の成果を自ら確認する機会です。

大学に所属するスタッフの目からすれば、
自分たちの行ってきた教育が成果を挙げることができたのかどうか、
常に繰り返し行っている教育課程の見直しはうまくいっているのか、
自ら確認し、また社会からの厳しい視線の前に襟を正す機会でもあります。

楽しみでもあり、現実にしっかりと目を向けなければならない、時にはつらいイベントでもあります。

僕も直接4年生を指導することはありませんが、わくわくと不安とともに卒業制作展会場に足を運びました。


10時半くらいに会場につき、
約2時間ほどかけて作品を楽しみ、
これはという作品は写真を撮りました


そしていくつかある展示室の最後の部屋で、気にかかる作品に出合いました。

作者である学生はとある難病の患者です。

ただしその難病は、
一般には難病であると認識されることはありません。
それどころか、本人の周囲の人びとから疾病であるという承認を受けることも難しい、理解されにくい病気です。

彼女の作品は
その病気の患者のための、
携帯端末を利用した、
薬品の複雑な投与法などの通知サービスや、同じ病気とともに暮らす仲間との通信サービスなどを総合的に組み合わせた、
生活介助提案です。

表面的なアウトプットだけをみれば、どちらかといえば地味な提案であり、
彼女の病気が理解されにくいタイプの疾病であるだけに一般的な訴求力も決して高くはなく、
なかなか評価されにくい作品かもしれません。


しかし僕は、衝撃を受けました。

もちろん衝撃の理由の一つは、
それほど親しかったわけではないのですが、
全く知らなかったわけではない知人にそのような難病の当事者がいたという事実にです。

そしてそれ以上に衝撃を受け、そして感銘を受けたのは、
彼女が自らのアイデンティティーとしっかり向かい合って取り組み、
デザイン作品という形にまで仕上げた勇気と意志に対してでした。

幸いにもご本人と話をすることができました。

そして僕も、一般にはなかなか認知してもらいにくい精神疾病とともに暮らしていることを告白し、
彼女の提案の意義について、僕の感動を伝えました。

彼女も理解者を待っていたようです。


彼女たちの疾病と僕たちのアルコール使用障害を全面的に同列に語ることは難しいでしょう。

でもともに、周囲に理解してもらいにくい疾病であるという点では、共通性が認められそうです。

多くの先天性内部障害精神障害も、周囲からの理解が得にくいという点では共通するかもしれません。

僕が一番注目したのは、
彼女の提案の中に、当事者同士のコミュニティーを作るための工夫が含まれていたことでした。


僕たち、理解されにくい疾病とともに暮らす人間は、どうしても孤立してしまいがちです。

時には家族にも理解されない、絶望的な状況に突き落とされることもあり得ます。

したがって少なくとも、僕たち同士は、つまり当事者同士は、連帯しなければならないのです。

その連帯を担保するやり取りは、たわいもないことでもよいのです。

もちろん、自分たちの疾病に関する重要な情報を誰よりも早く伝えあうことも大事です。

でもそれと同じく、或いは考えようによっては、

「今日はどう?」

「昨夜のお月さん、きれいでしたね」

みたいな、気楽な声掛けも重要でしょう。

僕たちは一人ではないこと、僕たちには仲間がいること、

そして僕たちは仲間を必要としていることを常に確認しあえることが大事なんじゃないかな。


僕が断酒ブログをほぼ毎日投稿するようになってから2年になろうとしています。

最初は自己満足でした。

でも訪問してくれる人があり、時にナイスをもらうことがあり、
ごくたまにコメントをいただけるようになって、
1つのコミュニティーに参加している楽しさを感じるようになりました。


そして今日彼女の作品にふれたことにより、
このコミュニティーは楽しさだけではなく、ある意味で命のネットワークでもあることを知りました。


当事者が当事者同士を知り合うこと、

そしてそのうえで当事者が自らの当事者としてのアイデンティティーについて社会に発信すること、

その繰り返しや積み重ねの中で、
やがては僕たちは、僕たちの特別なアイデンティティーを解消することができるはずです。


長くなってしまいました。

でも、

当事者コミュニティー、当事者による社会的発信、そして当事者学の確立、

難しい課題ですが、僕たちが取り組んでいける問題だと感じました。



話はガラッと変わりまして、最後にダメ押しの告知です。

明日、2月9日、京都、伏見稲荷駅下車すぐ、「アンソニア・カフェ」で、
リスボンと仲間たちのライブ・ギグ、決行します。

お近くの皆さん、お時間の許す皆さん、

お越しくださいませ。

「アンソニア・カフェ」については、ググっていただければたぶん一発でお店のサイトに到達できますので、
ご確認ください。



いつものように

皆さんも僕も、今日も明日も、厚かましくも謙虚にかつご機嫌さんで
LWoA Life Without Alcohol 断酒ライフ、継続していきましょう。