僕のワンノートサンバ

断酒ライフを送る元大学教師にしてジャズ・ピアニスト、ヴォーカリスト

丸くなったのか?

飲酒歴40年、断酒歴6年と9カ月、不良初期高齢者、リスボン、レベル64。

本日もリスボンの、届かなかった大きなお世話?ノープランブログ、ご訪問ありがとうございます。

 

明後日の土曜日(11月19日)、僕の勤め先の大学は、

年間でも最も受験生の多い入学試験を行います。

その日の夜、僕は、ポップス・シンガーのご主人がシェフを務める洋食屋さんで、

セッションホストを務めることになっていますので、

本当は入試業務はパスしたいのですが、

この試験だけは、さぼるわけにはいきません。

 

今日、その入試の打ち合わせのミーティングが行われました。

今回の入試は270分(4時間半)の鉛筆デッサンにより行われます。

不正行為はほぼ想定できない試験ですので、特にミーティングで確認することもないのですが、

試験の公正な執行を期するために、試験監督者には詳細なマニュアルが渡されます。

そして僕たち、試験監督は、そのマニュアルに従って試験を行います。

 

マニュアルには試験監督が行うべき動作が、試験の進行に従って細かく指示されています。

そして監督者が受験生に対して音声で伝える指示についても、

一言一句、違えることなく発声するように、シナリオ化されています。

 

実は僕も大学に勤め始めたころは、入試委員を務めていたこともあり、

このマニュアルの作成にかかわったことも何回かあります。

また実技系の教員が幅を利かせているうちのような大学内では数少ない、

しっかりとした日本語の書ける教員ということで、

この入試マニュアルについては、入試委員の職から離れてからも、

気になる点については、ミーティング等の際に指摘してきました。

 

今年のマニュアルにも、試験監督に対する指示におかしな日本語がありました。

それは、試験終了のアナウンスの後にデッサンの制作を継続していた受験生に対する指示ですが、

次のように書かれていました。

 

「終了の指示の後もデッサンの制作を続けている受験生は、制止させてください。」

 

一体、誰に、受験生の制作の継続を「制止させる」のでしょうか。

受験生の制作の継続を「制止する」のが試験監督の役割ですから、

正しくは、「制止させてください」ではなく、「制止してください」のはずです。

僕は何年か前のミーティングにおきまして、このことを指摘しました。

しかし僕の指摘がマニュアルのブラッシュアップに反映されることなく、

今年に至っています。

 

まともな日本語に対する意識の高い教師としては、由々しき事態です。

しかし僕にはもう、指摘する気概はありませんでした。

どうやら誰もおかしいとは思っていないようです。

あるいは、おかしいと感じていても、まぁ、いいか、位に思っているのかもしれません。

僕の所属組織に対する帰属意識は、おそらく平均的な日本人に比べれば、

犯罪的なまでに低かったと思います。

そして強制解雇を1年半後に迎える身となった今、

帰属集団に対する意識は、さらに冷えました。

 

帰属意識が冷え切ったと同時に、

たとえ建設的なことであったとしても、

くたびれ損だけが残る発言をあえてはしなくなった、

表面的には人間が丸くなったのかもしれません。

 

もちろん、僕の中で、

所属集団に対するポジティブな感情がほとんどなくなってしまったというのが、

実情です。

組織仕事に対して熱く取り組むことはもうなくなりました。

ま、そんなもんでしょう。

 

断酒ライフの継続によってもらうことのできた新しいエネルギーは、

僕自身のために使おうと思います。