僕のワンノートサンバ

断酒ライフを送る元大学教師にしてジャズ・ピアニスト、ヴォーカリスト

Less is beautiful. 改めて確認、そして挑戦

飲酒歴40年、断酒歴6年と10か月、不良初期高齢者、リスボン、レベル64。

本日もリスボンの、改めて確認・ノープランブログ、ご訪問ありがとうございます。

 

何回か報告してきましたように、

研究者としての僕の出発点は、

20世紀前半のヨーロッパにおける近代デザインの成立と芸術に関する研究です。

近代デザイン、カタカナでモダンデザインと書いた方がイメージしやすいかもしれませんが、

無駄をそぎ落とした幾何学的な形態と機能主義が結びついたデザイン様式として定義されます。

できる限り少ない要素で美的価値を追求する思考にこそ本質があり、

その精神は時に、

Less is beautiful. (より少ない方が美しい)というモットーで表現されます。

 

今日はカジュアルな洋食屋さんを会場とした、

ポップスを中心としたジャム・セッションのホストを務めてきました。

いつもは土曜日に行うこのセッション、

今日はお店の都合で平日に開催しました。

 

演奏や歌を披露するお客さんが曲の準備をしている間、

僕がピアノで場をつなぐのですが、

その時、この僕の人生の前半に大きく関わったモットー、

Less is beautiful. の精神を忘れていたことに気がつきました。

僕はピアノだけで演奏をするときに、

どうしても充実した音空間を作ろうとして、

メロディーも複雑にし、

左手の伴奏パターンも、音をいっぱい詰め込んでしまいます。

 

しかしお客さんに安心してもらおうとサービス精神を発揮しているつもりなのですが、

案外、マイナスの結果をもたらしているかもしれないことに気がつきました。

基本的な構造や線のしっかりした美しいメロディーは、

単音でゆっくりと弾いた方が、その美しさが引き立ちます。

 

右手で単音のメロディーを奏で、左手の和音はできる限り省略する。

場合によっては、右手も左手も単音しか奏でない。

ついつい、スカスカの音空間に不安になり、

指の許す限り音をぶち込みたくなりますが、

しかし、音が過剰に盛られた音文節が続くと、

きっと飽きが来ます。

 

音を豪華にしたいという欲求を一歩踏みとどめて、

シンプルな音構造で音楽を形作る、

意外に度胸がいりますが、

しかしここで Less is beautiful. の精神を思い出すことで、

新しく、そして古い挑戦に気もちを向けることができそうです。

 

美術と音楽の両方に出会うことができた人生、

ムチャクチャ、ラッキーだったかもしれません。