僕のワンノートサンバ

断酒ライフを送る元大学教師にしてジャズ・ピアニスト、ヴォーカリスト

最近、速弾きをしていません

飲酒歴40年、断酒歴7年と5カ月、不良初期高齢者、リスボン、レベル64。

本日もリスボンの、断酒的ビート感の勧め・ノープランブログ、ご訪問ありがとうございます。

 

今日の話は、表向きはジャズ・ピアニストとしての技術に関する話題に聞こえますが、

実は断酒ライフがもたらしてくれたであろう、新しい生活のビート感覚についての話です。

 

バンド小僧たちは、もちろん、

自分の耳が最高だと思った音楽を自分でも演奏してみたいと思って、

楽器の練習に励みます。

 

僕たちの世代でいえば、

ロックのギター小僧たちは、リッチー・ブラックモア(ディープパープル)や、

ジミー・ページ(レッド・ツェッペリン)といったギタリストたちの演奏を必死にコピーし、

僕たちよりも少し若い世代のギター小僧たちは、

高中正義カシオペアや T スクエアといったフュージョンジャズの名手たちの技をまねしました。

 

 

ベーシストたちは、古くはブラジョン、あるいはジャコ・パストリアスといった、

ベース名人たちの演奏を必死に真似ました。

 

そして僕たち、ジャズ・ピアノ小僧たちも、

ハードバップ・ピアニストたちの疾走感あふれるアドリブ・プレイに憧れ、

コピーしたものです。

 

そしてアマチュア・ミュージシャンの多くを魅了し、

そしてミュージシャン以外のリスナーたちを惹きつけてきたのは、

多くのヴィルトオーゾ・プレイヤー(名人)の、

目にも止まらぬ(耳にも止まらぬ)速弾きでした。

どんな楽器であれ、そしてどのようなジャンルであれ、

速弾きは多くの人を惹きつけます。

ライブの際も、これ見よがしの速弾きが決まった時は、

ムチャクチャ、受けがいいですし、オーディエンスも沸いてくれます。

 

もちろん、僕も速弾きには憧れます。

ライブの際にも、姑息な受けネライの速弾きを織り込むことがあります。

 

速弾きは、練習すればできます。

そして確かな練習の積み重ねの成果の披露は、拍手喝さいをいただくという、お土産が伴います。

地道な努力に積み重ねは、確かにそれ相応の対価が保証されます。

 

でもこの頃、速弾きは、たとえ受けが良くても、音楽の本質にとっては、

付随的な要素に過ぎないかもと思うようになってきました。

少し生意気なことを言うと、

音楽をはじめとする様ざまな芸術活動の一番ワクワクする面白さは、

新たな表現言語の発見であり、ホンマの意味でのオリジナリティーの創造にあると思います。

 

ジャズ演奏でいえば、

誰もが知っている和音進行の枠の中で、

誰も聞いたことのないような新しいアドリブ・メロディーを紡ぎ出すことができた瞬間、

そんな時間を演奏者として実感できることこそ、最高にエキサイトできるタイミングです。

さらに言えば、僕のそんな新しい発明・発見が、

共演者に瞬時に波及し、グループとして新しいサウンドを生み出すことができた瞬間、

そんな時間こそが、ジャズをやっていて本当に良かったと思える瞬間です。

 

まだまだ稀な機会ですが、最近、そんな時間を味わえていると思う、

幸せな機会にでくわせるようになったような気がします。

そしてそんな瞬間に出会うためには、

日常的なエクササイズの継続と、感覚の鋭敏化が必要だと思うのですが、

これらのある種の鍛錬は、やはり断酒ライフの継続があればこそ、可能だとも思うのです。

断酒ライフが保証してくれる規則正しい生活は、毎日のエクササイズの実行を可能にし、

そして3C(クリアー、クール、クレバー)の脳みそは、

自分の演奏に対する知的な判断を可能にします。

 

ジャズというと、

一般的にはアルコールの摂取が最も似合いそうな音楽というイメージがあると思いますが、

しかし断酒ライフゆえに可能なジャズの可能性もあるようです。

 

僕の幸運な旅はまだまだ続くようです。

新たな旅へと導きだしてくださった神様に感謝します。