僕のワンノートサンバ

断酒ライフを送る元大学教師にしてジャズ・ピアニスト、ヴォーカリスト

再び、神になりたかった男

飲酒歴40年、断酒歴7年と8カ月、不良初期高齢者、リスボン、レベル64。

本日もリスボンの、読破してしまいました・ノープランブログ、ご訪問ありがとうございます。

 

1週間ほど前に、

この3月に亡くなった幸福の科学大川隆法総裁の長男、

宏洋氏による、大川隆法についての評伝ともいうべき書籍について触れました。

 

神になりたかった男 - 僕のワンノートサンバ (hatenablog.com)

 

今日、厚かましいことに、先週、読み残していた部分を、

またも立ち読みで読破してしまいました。

 

以前にも記しましたが、YouTuber としても知られている宏洋氏の文章には、

何ぼ、プロのライターによる書き直しが施されているとはいえ、

ドキュメントとしての厳密さは期待できません。

 

しかし宏洋氏は、宇宙神を自称していた人物に最も近い存在であり、

愛憎相半ばするその筆致には、誰にもまねのできない、リアリティーが秘められていると思われます。

以前のブログの報告の繰り返しになりますが、

宏洋氏の「神になりたかった男 回想の父・大川隆法」は、

社会的な病理としての新興宗教について考えるための、

重要な資料であることは間違いありません。

 

今日、読破してしまった部分は、

幸福の科学が成功した原因と、

今後の幸福の科学には、全く可能性が残されていないことについて、

宏洋氏の分析が加えられた章です。

特に、幸福の科学の成功の原因についての宏洋氏の視点は、なかなか面白かった。

 

僕が幸福の科学について一番、納得できなかったのは、

宇宙の至高神を自称する大川隆法による、

宇宙全体の成り立ちに関する記述でした。

大川隆法は、100億年前という現在の物理学が認めるはずのない過去を措定し、

地球人は、宇宙の至高神の意志に従って地球を訪れた、

金星人をはじめとする、宇宙人の子孫であると説明します。

 

当たり前の自然科学の思考体系を全く無視した、荒唐無稽としか言いようのない、宇宙観です。

どう考えても、まともな思考体系にはなじみません。

 

至高神 エルカンターレ(笑ってはいけません)

宏洋氏によれば、この荒唐無稽さこそが、

一時的とはいえ、多くの信者を獲得した原動力の一つであったというのです。

 

人は、理解を超えた不思議な体系を受け入れたがる性向があるそうです。

大川隆法の屁理屈は、いわば、「ムー」などの空想的世界観に魅かれてしまう、

一見、思弁的に見えて、その実、非科学的な思考を弄ぼうとする、

高度成長期やバブル期に幅を肩をいからせていた、一部の世代に対して、

相当、強力に働いたのではないかというのが、宏洋氏の見立てです。

 

大川隆法の説く宇宙の成り立ちは、

まともな自然観や科学観とは相いれません。

しかし、いかにもこの世界の不思議の全てについて説明できてしまいそうな、

ある種のヤバさが垣間見えます。

そのヤバさを知ったものは、ある種の先覚者としてのエリート意識を植え付けられ、

選民思想にも近い、特権意識をくすぐられるのでしょう。

 

宏洋氏によれば、父、大川隆法は、

屁理屈作りに関しては素晴らしい才を発揮したということになるようです。

ただ、組織運営について大川隆法は、

あまりに自己中心的、そしてあまりにも組織性を無視したため、

宏洋氏は、今後の幸福の科学には、全く未来がないと切って捨てています。

 

「神になりたかった男 回想の父・大川隆法」は、

現代社会の病理の一つについて考えるための、重要な資料足り得ます。