僕のワンノートサンバ

断酒ライフを送る元大学教師にしてジャズ・ピアニスト、ヴォーカリスト

今年の僕の一曲

飲酒歴40年、断酒歴7年と10カ月、不良初期高齢者、リスボン、レベル65。

本日もリスボンの、今年の振り返りその1・ノープラン・ブログ、ご訪問ありがとうございます。

 

今年も残すところあと3週間、まさかとも思いますが、年末です。

異常なまでに夏が続いていたから油断していましたが、

予想通り、秋はあっという間に走り去り、

冬の寒さがやってまいりました。

 

僕は車の運転中は、CDを流すか、FM 放送を聴いていることが多いのですが、

FM に関していえば、NHK FM しか聴きません。

僕はジャズピアニストですが、

聴いて楽しむ際の僕のベストはクラシック音楽なので、

自然と民放の FM 放送は選択肢に挙がりません。

もちろん、NHK FM もクラシックばかりではなく、

色々なポップスもかかりますが、

もう一つ言えば、NHK と民放では、微妙に音質が異なるのも気になるところなんです。

 

たしか午後3時半くらいだったと思いますが、

運転中に FM を聴いていると、

「かけるクラシック」という番組の中で、

今年の漢字」ならぬ、「今年の一曲」という話題が取り上げられていました。

 

年ごとに、一番よく聴いた音楽、一番多く演奏した曲目、

あるいは一番、気になった曲目等を振り返ってみる、

全く考えたこともなかった発想でした。

 

そこで僕も、僕にとっての今年の一曲を考えてみました。

 

Ella Fitzgerald "My One and Only Love" - YouTube

 

色々考えた末に思いついたのが、

"My One and Only Love" という、ジャズ・スタンダードナンバーでした。

最高のジャズ・ヴォーカリストの一人、

エラ・フィッツジェラルドの歌唱の YouTube リンクを貼り付けておきます。

 

何故、この曲が僕にとっての今年の一曲かといえば、

多分、僕が今年、一番、練習した曲だからです。

 

正直なところを言えば、かなりの難曲です。

静かなバラードですが、メロディーラインの起伏が激しく、

正確な音程をキープすることが難しい、

ヴォーカリストとしての基本的な適性が問われる名曲といっていいでしょう。

 

練習を始めたころは、ライブで披露できるほどに歌いこなす自信はありませんでした。

しかし、ある程度、歌い込んでいくにつれ、

コード進行が体に染み込んでいくことによって、

メロディーのジャンプも自然に発声できるようになっていきました。

 

ライブでは、2回ほど、披露してみました。

それぞれにまあまあの手ごたえを感じました。

 

そして先月のことですが、

お客さんとして参加したセッションの際に、

セッション・ホストのプロ・ピアニストに伴奏をお願いし、挑戦してみました。

その演奏には、ドラマーであるお店のマスターも演奏に加わってくれました。

 

このプロ・ピアニスト氏、他のアマチュア・プレイヤーには、

優しい、分かりやすいバッキングを提供してくれるのですが、

僕の "My One and Only Love" には、

かなり難解な、テンションの高いコードを用いた、ややこしい伴奏で攻めてきました。

ヴォーカルのメロディー・ラインを暗示する影メロは、もちろん一音も出さず、

コード進行の基本ともいうべき、ベースラインも、相当、入り組んだ音型で演奏してくれました。

 

このプロならではの、腕試しのような挑戦は、僕にはとても嬉しかった。

プロピアニストとしての彼が、

マチュア・ヴォーカリストとしての僕の音楽的力量を試しにかかったわけです。

意地悪ではなく、ともにレベルの高い演奏を目指そうという、エールの投げかけでした。

 

ピアニストとしての僕にとって、この日の彼のバッキングのコード解釈は、理解を超えていました。

でもヴォーカリストとして、彼の意図を汲むことができ、僕にとっても最高の歌唱ができました。

無事に歌い終わった後、僕は、自然に彼に握手を求めました。

ミュージシャン同士がホンマに共鳴できた瞬間でした。

 

そんなわけで、今年の僕の一曲は、

ジャズのスタンダード・ナンバー、"My One and Only Love" に決めました。