飲酒歴40年、断酒歴8年と2カ月、不良初期高齢者、リスボン、レベル65。
本日もリスボンの、今日はクラシック・ネタ・ノープラン・ブログ、ご訪問ありがとうございます。
ピアニスト、マウリツィオ・ポリーニが亡くなったそうです。
また一人、真の音楽の価値を体現してくれて来た天才が、神様の下に召されました。
僕にとってポリーニは、
本当のピアノの音色を教えてくれたアーティストでした。
彼のショパンの練習曲集は、
あまりピアノ曲を好んでは聴かなかった若きクラシックファンの僕の琴線に響いた1枚でした。
クラシックのピアノ曲には、
どう考えても人間業ではないやろうと思わせる、技術的な難曲が少なくありません。
その中でも特にショパンの楽曲は、楽譜を見ただけでぶっ飛んでしまいそうになります。
もちろん、音楽の難しさは、そのようなパッと見てわかるような技術的なポイントにはありません。
殆ど不可能と思われるような運指をとんでもない練習量でマスターした後の、
そのような超絶技巧でこそ実現できる音世界の意味を開示することにこそ、
音楽演奏という芸術の本質があります。
表層的な技術的完成度においても群を抜いていたばかりではなく、
その音楽的な表現の深さにおいても、
大げさではなく、神の領域に近づいていました。
生意気盛りの高校生の頃の僕も、この大天才にはほとんどひれ伏してしまいました。
音一つひとつにごまかしがなく、
それゆえ、メロディーの表情も、音楽の構造的な強さも、
ハッキリと現れていました。
恐らくポリーニ自身も関わったであろう、録音技術の確かさも、
このLP作品の世紀を超えた価値を高めています。
ピアノという楽器のもっている、根本的な音色の美しさを教えてくれたアーティストです。
もちろん、僕がこれからどんなとんでもない逆立ちをしても、
この二人の神様の狂気の行きに踏み込んだアーティストの境地には近づくことすらできません。
でも、素晴らしいアーティストの素晴らしい足跡に、
自らの感性で触れることができたことの幸せを誇らしく思います。