僕のワンノートサンバ

断酒ライフを送る元大学教師にしてジャズ・ピアニスト、ヴォーカリスト

1週間前の怒りのその後

飲酒歴40年、断酒歴7年と4カ月、不良初期高齢者、リスボン、レベル64。

本日もリスボンの、これもアーカイブ?ノープラン・ブログ、ご訪問ありがとうございます。

 

今日は木曜日、

僕の現在の1週間のスケジュールの中では、ムチャクチャハードということはありませんが、

ちょっとばかり盛りだくさんの1日です。

 

1講時目に少しばかり高度な内容の講義を行い、

昼から1コマ、大学の授業とは信じがたいレベルの英語の演習を行います。

授業の空き時間には、他の授業の準備を確認したり、

業務上の必要書類の作成などを行います。

朝は朝で、

腹筋トレ、ピアノの早朝練習等を行いながら家事ルーティンをこなします。

 

そんな中で、今日は、この1週間、僕を悩ませてきた懸案に一つ、決着をつけました。

 

先週の木曜日ですが、

先ほど、記しました超初心者向けの英語授業の最中に、

二人の中国からの留学生が脱走したことを報告しました。

 

やっぱ怒りは損かも - 僕のワンノートサンバ (hatenablog.com)

 

あれから脱走した2名の男子学生とは、メールのやり取りによる事情の確認を行ってきましたが、

今日、3時に、2名を呼び出し、対面で指導を行うことにしました。

 

メールのやり取りの中で2名は、

先週の授業の授業途中退室が仕方のない事情に基づいていたことを訴えてきました。

一人は、入管に書類を提出する必要があり、その期限が迫っていたこと、

そしてもう一人は、アパートのネット工事に立ち会う必要があったと伝えてきました。

 

僕はこの二人の言い分については、最初のころは疑っていましたが、

今では本当でも嘘でもどうでもよくなってきました。

事情はどうあれ、トイレに行くといって途中退室し、戻ってこなかった事実は変わりありません。

 

僕は一人ひとりに、僕がなぜ怒っているのか分かるを尋ねました。

そしてとても残念なことですが、

二人ともわかると言いながら、

僕の怒りに理由について問いかけると、

それぞれ、自分の事情を説明しようとします。

 

つまり、二人とも僕の質問の意味を理解していなかったのです。

何度も言葉を変えながら質問しましたが、

彼らは二人とも、自分の事情を説明しようとしました。

 

僕はどのような答えが返ってきても、

彼らの授業復帰を認めるつもりはありませんでしたが、

しかしある意味で最悪の現実が突き付けられる結果になりました。

 

ここから先は、僕の勤務先の大学だけが抱える特殊な事情ではありません。

日本中の多くの大学が直面している、問題の一つの表れです。

そしてもっと言えば、今この国置かれている、ある種の危機的な情況の一面でもあります。

 

ここ10年以上になると思いますが、

日本の殆どの私立大学は、中国からの留学生を、主には経営上の理由で受け入れざるを得ません。

そしてとても苦しいことなのですが、

日本語力が明らかに伴わない、

大学での学習以前に問題のある若者たちを入学させなければならないのです。

 

僕が対応した二人の中国の若者たちは、

しかし僕たちの大学が入学を許可した学生です。

僕は二人に対して僕の授業への参加は認めないことを告げながらも、

今後、あるいはほかの授業において、教師や大学職員、

そして場合によっては学生仲間たちにうそをつくことは決してあってはならないことを、

繰り返し、伝えました。

ぼくの今日の対面指導は、僕の怒りが解けていないことを伝えつつ、

しかし、今後の学習にあたっての心がけを伝えることも目的としています。

彼ら二人が気もちを入れ替えてくれるかどうかは、正直、分かりません。

どちらかといえば、悲観的です。

 

中国から多くの若者が日本の大学に留学しています。

その背景には、中国の高考(ガオカオ)という、厳しい入試制度があります。

中国では、中国版共通テストともいえる高考で、入学できる大学がほぼ決まります。

ガオカオで思うような成績が残せなかった、しかしある程度の経済力のある若者の何割かが、

日本への留学を考えます。

 

つまり中国からの留学生は、日本の大学の教育や研究に魅かれてやってきているのではないのです。

彼らにとって日本の大学は、

入学を希望していながら高考の成績で果たせなかった中国の重点大学の代替手段でしかないのです。

 

もっと言いましょう。

先進国であり、経済大国である中国の若者は、

後進国であり、経済的にも劣る日本の大学で、

形だけの留学を果たし、海外の大学卒業という肩書をゲットするためにこの国に来ているのです。

 

日本の大学の研究レベルは、

中国の重点大学にはほとんど及びません。

日本の大学の研究者の大半は、

バイト等に明け暮れる余裕のない若者たちに、

就職活動を念頭に置いた実学的な詰め込み教育を行うことに追われています。

この国の国力の低下は、起こるべくして起こったのです。

 

僕が直接、かかわることになった二人の若者には、それぞれの固有の事情はあったと思います。

しかし、日本の多くの大学が直面している、レベルの低い留学生の問題の背景には、

この国自体の低レベル化があります。

決して楽しい事実ではありませんが、あえてこの事実を、

ブログという公的な電脳空間にアップしておくことには意味があるだろうなと考えました。

もちろん、僕の主観が捉えた現状理解です。

事実の切り取りや、過剰な解釈もあるでしょう。

今、日本の大学が置かれている状況、そしてこの国が直面している状況について、

僕なりの報告、そして分析として読んでください。