僕のワンノートサンバ

断酒ライフを送る元大学教師にしてジャズ・ピアニスト、ヴォーカリスト

今日はクラゲ祭り

飲酒歴40年、断酒歴7年と4カ月、不良初期高齢者、リスボン、レベル64。

本日もリスボンの、心地よい疲労感・ノープランブログ、ご訪問ありがとうございます。

 

先日は僕のキャリアに関する風変わりな事情について報告しました。

 

僕の風変わりなキャリア その1? - 僕のワンノートサンバ (hatenablog.com)

 

研究者、あるいは大学の教師という職業そのものが、

ある意味で浮世離れしていますので、

世間の一般常識が通用しない部分がありますが、

僕の場合、新設大学の教員としてキャリアをスタートさせるという、

さらにレアな情況が加わりました。

 

そしてもう一つ、僕の特別な情況を付け加えますと、

研究者としての僕の専門分野の定義があやふやだったということもあります。

 

一応、デザイン史、およびデザイン理論の専門家というのが、

僕の就職の際のメインの肩書だったのですが、

しかし非常勤講師時代にデザインの実技を指導していた経験もあり、

デザイナーという資格も加えられてしまいました。

実際には僕には、デザイナーとしての職歴はほぼ、ありません。

それにもかかわらず、就職した最初のころは、

基礎造形実習(デザイン)なぞという授業も担当させられました。

 

勤務先からも玉虫色の人格とキャリアの行使を無理強いされた形になり、

一体、ワシは何者なんじゃいという疑念が僕のキャリアに常に付きまといました。

このあたりの苦しみも、

僕のアルコール使用障害形成の周辺的な要因であった可能性があります。

 

研究者として一体何をすればよいのか、何をしたいのか、

かなり長い間、苦しみました。

 

そして20世紀の終わりくらいのことですが、

いくつかの大事な出会いがあり、

障害者の問題について、アートやデザインの切り口から考えていくという、

僕の研究者としての登録商標がほぼ、固まりました。

 

前振りが長くなりましたが、

今日はそんな僕の研究活動の一部を形成している、実践的な仕事に取り組んできました。

それは、障害者施設を訪問し、

利用者や職員たちを対象としたアート・ワークショップを行うことです。

長らくコロナ・ウィルス・パンデミックのため、現場に出ることができませんでしたが、

今年度から一つの社会福祉法人での活動が復活しました。

 

今日は午前中に大学で(どうでもいい)会議があり、出勤したのち、

材料を車に積み込んで、現場に向かいました。

 

今日の取り組みの成果の写真が今、手元にないので、

皆さんにご披露できませんが、

一つの部屋中にクラゲを吊るしまくりました。

 

何のこっちゃと思われると思いますが、

素材は、大量のレジ袋と、荷造り用のビニールひもです。

部屋の中にビニールひもを張り巡らし、

そのひもに、空気を含ませて膨らませたレジ袋を吊り下げていくという、

目的も意味もない、アホアホ・アート・インスタレーションです。

 

僕が障害者のみんなと行うアート遊びは、

具体的な目的はありません。

何かを表現しようということもありませんし、

美しい空間を作ろうという大それた目的もありません。

ただただ、意味がないけれど、一度始めてしまうと、楽しくてやめられないというのが、

僕の研究?してきたアート・インスタレーション・ワークショップです。

 

もちろん、このワークショップには、

理論的な背景があります。

僕の一見、アホにしか見えない実践は、

障害の社会モデルという障害学の中心的な考え方と、

現代美術の方法論を突き合わせることで生まれました。

 

ややこしい学術的な理論背景はありますが、

実際に取り組んでいる最中は、ホンマにひたすら楽しいだけです。

指導(と言いながら多分、僕が一番、遊んでいます)する僕も、

知的な障害と暮らしている仲間たちも、

その仲間たちをサポートするスタッフの皆さんも、

常識的な分別のようなものを一時的に棚上げして、

夢中になって部屋中にレジ袋クラゲを吊るしていきます。

 

そして皆が納得できた段階で、下に寝転がってみたり、

部屋の外から眺めてみたり、

少し高いところから見下ろしてみたりと、

いろいろな見方をして一時的な不思議な風景を堪能します。

 

みんなが堪能したことろで、皆で一斉にお片付け、

レジ袋クラゲを外し、また平に折りたたみます。

お片付けのプロセスも、非日常性というフレーバーに彩られています。

1時間余りのワークショップは、全員の笑顔の中で終えることができました。

 

ムッチャクチャ疲れました。

ただし、気もちのよい疲れ方です。

きっと今夜は、仲間たちの笑顔を思い浮かべながらも、

一瞬にして寝落ちしてしまうことでしょう。